大阪高等裁判所 昭和27年(う)1137号 判決
原判決はその摘示の第一事実として被告人金岩正博が主務大臣の免許を受けずして昭和二六年五月八日から同年八月五日までの間、成瀬広三郞外五四名と一口に付掛金一日一〇円の割合で二〇〇日間に掛金を払い込ましめその期間満了のとき二、一〇〇円期間中途においては一定割合額の物品を給付する契約又はこれと同種の契約を為し、該契約に基き同人等に対し同年六月七日頃から同年九月二七日までの間五五口、合計約二二万五、五二〇円に相当する物品の給付を為して無尽業を営んだ事実を認定して、これに無尽業法第三六条を適用処断しているのである。しかしながら、無尽業法にいわゆる無尽の意義については同法第一条に明定するところであつて、同条本文前段のいわゆる無尽並びに同後段のいわゆる無尽類似の行為は共に一定の口数の定めがあつて組を構成しているものでなければならないものと解するを相当とする。けだし、一定の口数の定めのないものについても昭和二六年六月五日法律第一九九号(相互銀行法)による改正前の無尽業法においてはその第一条第二項により無尽と看做され同法の適用を受けていたのであるが、右相互銀行法により前記条項を削除するとともに、相互銀行法第二条第一項第一号においてこれを相互銀行の業務として認め同法の適用を受けさせる趣旨自ら明らかなるによる。しかるに、原判決摘示の前記事実にその挙示する証拠を対照するときは同被告人が成瀬広三郞外五四名となした前記契約は一定の口数の定めがなかつたことが推知できるばかりでなく、当審において取り調べた証人中硲幸一郞の供述並びに原審において取り調べた証拠によつてもこれを肯認することができるから、右契約は無尽業法第一条所定の無尽乃至無尽類似の行為に該当せず、従つて同被告人の前記所為も亦同法第三六条に該当しないこと勿論である。それ故原判決がこれに同法条を適用処断したのは法令の適用を誤つたものであつて、その誤が判決に影響を及ぼすこと明かであるから論旨は理由がある。(中略)
相互銀行法にいわゆる相互銀行業を営むというには同法第二条第一項各号に列挙する業務又はこれに附随する業務のうち少くとも同項第一号所定の一定の期間を定めその中途又は満了のときにおいて一定の金額の給付をすることを約して行う当該期間内における掛金受入の行為の存在をその特徴とする。しかるに、原判決は斯る掛金の受入事実を認定せずして単に同項第三号所定の資金の貸付をなした事実のみを挙げ、同法第二三条に問擬しているのであつて、原判決には理由不備の違法があるものといわねばならないから、原判決は破棄を免れない。
よつて刑事訴訟法第三九七条第三八〇条第七八条第四号に従い原判決を破棄し、なお同法第四〇〇条但書により当裁判所において更に判決をすることとする。
(犯罪事実)
被告組合は昭和二十六年五月初頃設立した物品の日掛販売並びにこれに附帯する事業等を営む中小企業協同組合法による企業組合であつて、被告人金岩正博は設立当初から事実上、同年八月七日から代表理事としてその業務を総括主宰していたものであるところ、被告人金岩正博は被告組合の業務に関し主務大臣の免許を受けずして和歌山市雑賀町二番地所在被告組合事務所において原判決添付の第一表及び第二表の各契約欄記載のように(但し第一表の二の建本茂代を津本隆代に、同五の宮脇鈴子を寺脇鈴子に訂正する)成瀬広三郞外九五名との間に一定の期間を定め日掛金を払込ませ(原則として期間二〇〇日間掛金一口一日十円)、同人等の選択によりその期間満了のときにおいて一定の金員(原則として一口に付二、一〇〇円)期間中途においては一定割合の金員又はこれに相当する代価の物品のいずれかを給付する契約をなし、該契約に基き同人等から少くとも右第一表及び第二表の各給付状況欄記載の給付年月日まで前記各掛金の受入を為し、且つ期間中途において金員の交付を選択した前記第二表記載の契約者竹本博一外四〇名に対し同表給付状況欄記載の年月日その給付額欄記載の金員を給付して資金の貸付を為し以て相互銀行業を営んだものである。
――中略――
(法律の適用)
被告人金岩正博の判示所為は相互銀行法第二三条罰金等臨時措置法第二条に該当する(同被告人の昭和二六年六月五日相互銀行法施行前の所為は同法による改正前の無尽業法第三六条第一条第二項に該当するところ、右第一条第二項は相互銀行法により削除せられたため同条項所定の無尽業を営んだ所為も又無尽業法第三六条の適用を受けないこととなるが、これと同時に公布施行せられた右相互銀行法第二三条により同一構成要件を以て犯罪とする刑罰規定が設けられたから、両者旧法及び新法の関係にあるものと認め、新法である相互銀行法第二三条違反の一罪として同条のみを適用する)から、懲役及び罰金を併科した刑期及び金額範囲内で同被告人を懲役六月及び罰金三、〇〇〇円に処し、刑法第二五条を適用して情状によりこの裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、同法第一八条により右罰金を完納することができないときは金二〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、同被告人は被告組合の業務に関して本件犯行をなしたものであるから、被告組合に対しては相互銀行法第二七条を適用して同法第二三条所定の罰金刑を科しその金額範囲内において被告組合を罰金一〇万円に処することとする。